第13章 ◇12話◇彼の腕の中≠安心できる場所
朝の日差しを感じて起きると、目の前にリヴァイがいた。
すぐに目が合って、私は怯えながら身体を離す。
それに傷ついたような表情を見せたリヴァイだったけれど、ゆっくりと身体を起こすと私の髪をクシャリと撫でた。
「おはよう。」
ひどく優しいその仕草と優しい声色が、私の胸を締め付ける。
きっととても切なそうな顔をしているのだろう。
それが分かるから、余計にリヴァイの顔を見たくなくて、私は起き上がらないままで目を伏せる。
ベッドから降りたリヴァイは、兵団服に着替えだしたようだった。
今日も、任務というのがあるのだろう。
私はまた、ここで1人なのだろうか。
読めない本を渡されて、夕方まで時間を潰せば、怖い思いをしなくて済むのだろうか。
あと何日、そんな時間を過ごせば、家に帰れるのだろうー。
「今日はモブリットにそばにいさせる。
あのクソ眼鏡は近づかせねぇように言っておくから心配するな。」
そう言って、リヴァイはジャケットを羽織ると部屋を出て行こうとした。
「待っ、待って…っ。」
気づいたら身体を起こして、出て行こうとしている背中を呼び止めていた。
リヴァイが振り返る。
彼はもう、期待したような目は私に向けない。
諦めているとは違う。
きっと、今のこの状況を受け入れてしまったのだろう。
私はまだ、これからもずっと、受け入れたりなんかしないのにー。
「どうした?」
「…今日も、夕方まで戻らないの?」
リヴァイと離れるのが、不安だった。
だって、ペトラ達が昨日、リヴァイは人類最強の兵士なのだと言っていた。
巨人なんて簡単にやっつけてしまうから、私は何も心配しなくて大丈夫だと。
確かに昨日見たリヴァイはとても強くて、頼りがいのある男の人の背中をしていた。
だからー。
そばにいてほしくてー。
「実験次第だが、出来るだけ早く帰るようにする。」
「…そう。」
やっぱり行ってしまうのだと理解して、私は目を伏せる。
自分を恐怖のどん底に落とした張本人に、私は何を期待して、どうして助けてもらおうとしているのだろう。
もう、自分で自分が分からなかった。
ただ怖くて、帰りたくてー。
でも、帰れなくてー。
だから、せめて安心できる腕の中にいたくて、私はー。