第12章 ◇11話◇逃げられない
銃を持った男は、拘束した私の身体を乱暴に突き飛ばした。
地面に落ちる直前になんとか両手をついて自分の身体を庇ったけれど、落ちている石か木の枝か何かで手を切ったのか痛いー。
でも、そんなことも分からないくらいに、今はただ、怖いー。
カチャカチャと嫌な音がして慌てて振り返れば、獣のような目をした男達が私を見下ろしていた。
「売る前に、俺達が味見しておかねぇとなぁ。」
「俺達はプロだからよ、不良品は売れねぇだろう?」
「一緒に楽しもうぜ。」
恐怖とパニックで男達の言っていることは頭をすり抜けていた。
でも、ベルトを外そうとしている手が、これから起こる最悪な事態を嫌でも教えてくれる。
(助けて…っ。)
叫んだはずだった。
悲鳴を上げたはずだった。
それなのに、声が出ない。
恐怖で助けも呼べないけれど、でも、誰かー。
助けてー。
男が私に手を伸ばす。
恐怖で目を瞑ったその時、何かが風を切る音がした。