第10章 ◇9話◇逃げたい
リヴァイ達は、あの巨人を使って何をする気なんだろう。
もしかして、私を食わせるとかー。
巨人が人を食べるのかどうかは分からないけれど、襲われたら死んでしまう。
でも、部屋の外は見張りがついているみたいだし、そもそも鍵がかかっているのなら部屋から出られない。
「さん、気絶したんだろう?」
「うん。真っ青な顔で倒れちゃって…。
モブリットさんが部屋まで運んでくれたの。」
「可哀想に…。あの人もヒドいことをするよなぁ。
が何体もの巨人に喰われて殺されたって分かってるはずなのに。」
「だからこそ、巨人を見たら何か思い出すかもって考えたみたいよ。」
「それも分からんでもないが、あまりにも荒療治過ぎやしないか。
だから、リヴァイ兵長も巨人は見せるなと言っていたんだろう。」
「ハンジ分隊長は、答えが欲しい人だからね…。」
「まぁ、そうだな。」
ドアノブに触れていた手が、カタカタと震える。
今、彼らは何と言ったか。
(私、が…、巨人に食べられた…?)
私が何体もの巨人に食べられて死んだー。そう言ったのか。
確かに、私はもう死んだはずだと、リコにハッキリと言われた。
そういえば、どうやって死んだのかは聞いていない。
(嘘…、嘘…。)
身体が震える。
もうこれ以上はないと思っていた恐怖を軽く超えて、私は今、今度こそ恐怖の沼に落ちていこうとしている。
このままここにいたら、その沼の底の底に落ちて、本当に逃げられなくなる。
私は踵を返した。
部屋から出られないのなら、窓からでも、どこからでもいい。
逃げよう。
こんな恐ろしい場所から、早く。早くー。
もうどこでもいい。
自分の家がどこにあるのかわからないけど、いい。
ここじゃないなら、巨人のいないところならどこだっていい。
早く、早く、逃げなくちゃー。
殺されるー。
巨人に、リヴァイ達にー。
私は殺されてしまうー。