第7章 ◇6話◇モノクロの世界で愛される彼女
でもー。
どこか違和感を覚えて、その写真をじっと見る。
「…あれ?絵?」
ふと、気づいた。
モノクロ写真だと思ったのだが、よく見ると絵のようだった。
なんだー。
すごくホッとした。
リヴァイと見つめ合う写真なんて撮られた覚えはないのだから、それも当然なのに、一瞬、そんな写真をいつ撮ったっけなんて考えてしまった自分が怖い。
ただ、違和感はまだ拭えなくてー。
「あぁ、それ。結婚式もしないって言うから、絵くらいは描いてもらったらって
あたしがに言ったんだ。2人とも絵を描き終わるまでじっとしてないから、
画家さんもすごく大変そうだったよ。結局、そういう感じになったしね。」
リコがやってきて、私が持っている写真立ての絵を覗き込む。
何を、言っているのだろう。
そんな記憶はないし、私はリヴァイと恋人じゃないし、結婚の予定もないのにー。
「ねぇ、リコ。」
「ん?」
「私は…、誰なの…?」
「…みたいな、誰かかな。」
リコは良くも悪くも正直だ。
だから、私はいつだって誰よりも彼女を信頼している。
それにすごく頭が良くて、私は彼女が間違ったことを言っているのを聞いたことがない。
だからー。
あぁ、そうだ。違和感の理由にやっと気づいた。
写真立てを持つ私の手が小刻みに震える。
私は、この絵の中で、愛おしそうに恋人を見つめる彼女を、知らないのだ。
お互いを心から想い合っているのが伝わるこの絵が、もし本当に現実としてあった瞬間を切り取ったのなら、それは絶対に私ではない。
記憶にないからじゃない。
私はこんな風に、誰かを愛したことなんかない。
愛されたことなんか、ないー。
じゃあ、私にそっくりな彼女は、誰ー。
私は、誰ー。
リビングからは、リヴァイがハンジ達に掃除の指示を出している声がずっと聞こえていた。