第2章 ◇1話◇鏡に映る知らない彼女
企画調査部と言えば、変わり者だらけと評判の日陰部署だ。
何をしているところなのかはイマイチよくわからないけれど、部名に調査とつくくらいだから、何かを調査しているのだろうと思う。
毎年新入社員が入ってくるこの会社でも、そのよく分からない部署を望む若者なんているはずもなく、配属されるのは本当に一握りの変わり者だけだ。
「エルヴィン部長が直接スカウトして連れてきたって話だよ。」
「へぇ~。どんな人なんだろう?見た?」
「見てはないけど、元々、裏社会で探偵してたやつらだって誰かが言ってたかな。」
「やつら?1人じゃないの?」
「いいや、3人。男2人と子供みたいに若い女1人だって。」
私が来客の対応に追われている間、社内は変わり者部署に入ってきた変わり者の話題で持ちきりだったようだ。
フロアが遠いので、リコも見たわけではないらしいが、男2人はなかなかイケメンだったらしい。
女子社員が特に盛り上がっていたということだった。
恋人募集中なら見に行ってみればと適当なアドバイスをリコからもらったけれど、日陰部署に入ってきた裏社会の男なんて絶対に嫌だ。
私はもっと、あの爽やかイケメン俳優の彼みたいな人がー。
またリコに馬鹿にされるから言わないけれど。
そんな話をしているうちに昼休憩に入った社員達が続々と食堂に集まってきていた。
その人の波に乗ってやってきたイアンとミタビが、自然な流れで私達と向かい合う席に着く。
「お前達も調査部に入った男達の話してるのか。」
イアンが呆れたように言う。
婚約者のリコが他の男の話をしていたことの嫉妬というよりも、もう聞き飽きたという様子だ。
噂話に疎いイアンの耳にすら聞き飽きるほど届くくらいだから、相当な話題になっているようだ。
「イケメンだから見に行ってみたらどうかとアドバイスをあげてたんだよ。」
「またお前は適当なことを…。が本気にしたらどうするんだ。」
「そうだぞ。この間、ストーカーに襲われたばかりなのに。
は変な男にばかり目をつけられるんだから
そういうのとは敢えて関わらないくらいにしておかないと。」
イアンとミタビが、心底真剣に言うから、余計に惨めな気持ちになる。
まるで、私は、ストーカーか変な男にしか好意を寄せられないみたいな言い方ー。
何より、間違ってないのが悔しい。
言い返す言葉もない。