第5章 ◇4話◇頼みの親友
「も降りようか。」
リヴァイが荷馬車から飛び降りた後、私に声をかけてきたのはモブリットだった。
危ないからと彼が出してくれた手を見なかったことにして、私はロングワンピースを両手で摘まんで持ち上げて、思い切って飛び降りてー。
バランスを崩したー。
「きゃぁ…っ!」
「大丈夫!?」
前のめりに倒れそうだった私を支えてくれたのはモブリットだった。
抱きしめられるかたちになってしまって、最初から彼の手をとっておけばよかったと後悔する。
「てめぇ、なに勝手に触ってやがる。」
「え!?これは不可抗力ですよっ!!」
妄想男のリヴァイが勝手に嫉妬してモブリットを引き剥がして怒り出した。
慌てて言い訳をしているモブリットだけれど、そもそも私はリヴァイのものではないのだから、怒られている理由が理不尽すぎる。
でも、誘拐犯に抱きしめられるなんて最悪なので、とりあえずは、彼が離れてくれて助かった。
そして、私はハンジに訊ねることにした。
誘拐犯の中では、ハンジが一番、私の話を聞いて理解しようとしてくれている気がする。
「ねぇ、私を家に帰してくれるんでしょ。飛行機に乗っていくの?」
「ひこうき?それが何かは分からないけど、それに乗らないことは確かだね。」
「…じゃあ、どうやって帰るの?」
「君の家はすぐそこだよ。」
ハンジは道の先を指さした。
そのどこに私の家があると思っているのかは分からないけれど、とにかく、それは大きな間違いだ。
ここは見覚えのない街だし、どこかも分からない。
「でも、まずはリコに会いに行こう。」
「リコ!?リコがいるの!?」
漸く知り合いの名前が出てきて、本当に嬉しかった。
何を訊ねても、何を言っても、知らない分からないばかりの私が初めての反応を見せたことで、ハンジもとても驚いていた。