第5章 ◇4話◇頼みの親友
結局一睡もできないまま朝を迎えた。
最悪なことに、リヴァイも一睡もしていない。
ただ2人でずっと、相手が寝るのをひたすら待っているという異常な夜を過ごしたせいで、頭が痛い。
迎えに来たハンジと一緒に部屋を出た私が、まず驚いたのは、誘拐犯仲間が彼らだけではなかったことだった。
昨日の夜、主犯の男、リヴァイの執務室にいた彼ら以外にも、アジトにはまだたくさんの誘拐犯がいたらしい。
昨日は部屋着だったリヴァイ達は、今朝はみんなお揃いの制服を着ていた。兵士のようなその格好が、誘拐犯グループの制服らしかった。
今朝初めて顔を見た誘拐犯達は、私を見ると顔色を真っ青にしていて、ハンジ達の反応に似ていた。
誘拐しておいて、人の顔を見て幽霊でも見たみたいに真っ青になるなんて、本当に失礼極まりない。
そして、次に驚いたのは、アジトから外に出たときだ。
普通の家ではないとは思っていたし、マンションとかでもないのも分かっていた。
でも、まさか、古城だったなんてー。
しかもすごく立派な古城だ。
こんなところ、どこにあったのだろう。とても広い敷地のようだけれど、私の住んでいた街からは電車や飛行機の距離なのだろうか。
少なくとも車ではなさそうー。
そんなことを考えていた私は、また驚かされることになる。
「…馬?」
さぁ、家に帰ろうー、そう言ってハンジ達が乗っているのは、車でも、せめて自転車でもなくて、馬だった。
馬で移動するなんて、いまどきありえない。
でも、彼らは当然のように、馬に乗っているー。
「馬の乗り方も忘れちゃったかな?」
ハンジは少しだけ悲しそうに眉尻を下げると、荷馬車を持ってきてくれと近くにいた仲間に頼んだ。
それからすぐに、荷馬車が到着し、その上に乗るように言われた。
躊躇っていると、リヴァイがやってきて自分の馬に乗せてやると言い出したので、急いで荷馬車に乗った。