第4章 ◇3話◇混乱
「あれ…?」
私は首を傾げる。
そういえば、誘拐された記憶はない。
一体、私はどうやってこの誘拐犯のアジトに連れてこられたのだろう。
「どうかしたのか。」
身体を前のめりにして、主犯の男が私をまっすぐに見る。
何かを期待している目を向けているところ大変申し訳ないが、恋人だったことを思い出したわけではない。
そもそも、私と主犯の男は恋人ではないのだから、そんな最悪な関係を思い出すことは、永久に訪れない。
「…どうやって私を誘拐したの。」
私は必死に最後の記憶を辿った。
でも、覚えているのは、新しい部屋着を着てご機嫌で鏡の前に立っていたところまでだ。
それがどうして、こんなところにいて、私はあの男の寝室のベッドで寝ていたのだろう。
「あのね、さっきから言おうと思ってたんだけど。
私達は君を誘拐なんてしてないよ。」
眼鏡の人は、この期に及んで、誘拐を認めないらしい。
じゃあ、この状況を彼らは何だと思っているのだろう。
バカじゃないのかと怒鳴り散らしたいけれど、恐怖でそれも出来そうにない。
「むしろ、僕達の方がに聞きたいんだ。
どうして空から降ってきたの?生き返ったの?」
おっとりした印象の金髪の男の人が言ったそれが、私が生まれてから今まで聞いてきた意味の分からない言葉ランキングで、俺は恋人だを抜いて、ぶっちぎりでナンバーワンに違いなかった。