第4章 ◇3話◇混乱
「来ないで…!!」
部屋の隅に追い詰められた私は、震える身体で必死に立って叫んだ。
2m程度の距離を保って、落ち着けと繰り返す男が怖い。怖いー。
知らない男に誘拐されて、わけのわからない薄暗い部屋に寝かされていたのだから、落ち着けるわけないじゃないか。
怖い、怖いー。
「どうしたのっ!?」
突然、部屋の扉が勢いよく開いて、誰かが入ってきた。
男か女かも分からない眼鏡をかけたその人に続いて、知らない人達が続々と部屋に入ってくる。
中には、可愛らしい女性もいて、彼らは一様に、部屋の状況を見て驚いた顔をしていた。
彼らは、どっちの味方なのだろうかー。
怯える私は、ロングワンピースをギュッと握って、彼らの動きを待った。
「何があったの、リヴァイ?」
眼鏡の人が、誘拐犯の男に訊ねた。
とても親し気なその様子に、私は絶望する。
彼らはみんな、誘拐犯の仲間だったようだ。
「…覚えてねぇらしい。」
「覚えてない?リヴァイのことを?」
「あぁ。それで、近づくなと言って、そこから動かねぇ。」
誘拐犯が私を指させば、仲間達の視線もこちらに集まる。
不思議なのは、怯える私に、彼らがとても悲しそうな表情を見せたことだ。
でも、そんなのはどうでもいい。
誘拐犯たちの心情なんて、一生分かりたくない。
「帰して…、私を家に帰して…!ドラマの最終回楽しみにしてたんだから!!」
どうにか家に帰してほしくて叫んだセリフが耳に聞こえたとき、リコに言われたことを思い出した。
私は本当に、頭が悪いらしいー。