第4章 ◇3話◇混乱
心を殺して任務を全うしようとしているリヴァイからは狂気すら感じるのに、時々ふと、の名前を出したりもする。
まるで明日も会えるみたいに、昨日会って来たみたいに、彼女の話をしているときだけ、リヴァイは以前の彼に戻っているように見えた。
に出逢ってから見せるようになっていた柔らかい表情が戻っていて、それが痛々しくて、ハンジ達は必死に涙を堪えて、彼の話を聞いていた。
でも、リヴァイもすぐに思い出すのだ。
残酷な現実をー。
そして、その瞬間、スーッと瞳から色が消える。
その度に、何度でもリヴァイの心が壊れた音が聞こえるようだった。
「それが他の誰かだったってことはないんですか?
似てる指輪で、本当はさんは生きてたとか。」
「とリヴァイ兵長の名前がちゃんと刻まれてたのを確かめた。」
「指だけちぎれたけど、後は大丈夫だったとか…!」
「今そこで寝てるは五体満足だ。
一応医療兵に診てもらって、傷ひとつないことを確かめたじゃないか。」
「じゃあ、どうして…!死んだはずのさんが生きてるんですか!?
空から降ってくるんですか!?」
狂いそうになる状況に耐えられず、オルオが声を荒げた。
それは、寝室にいるリヴァイに聞こえたに違いなくて、モブリットが慌てて静かにするように注意した。
「エレンは一度巨人に食べられた後に、巨人化して生き返ったんですよね?
それなら、さんも同じなんでしょうか?」
ペトラがひとつの可能性を導き出す。
それは、ハンジやモブリットも頭には過った。
だがー。
「エレンは巨人化した後、うなじから出てきたって聞いてる。
でも、は空から降りてきた。まるで…。
まるで、死んだ人間が天使になって戻って来たみたいに。」
ハンジは天井を仰ぐ。
数十分前の出来事、ちゃんとこの目で見たのに、まだ信じられない。
死んだ人間が生き返るーそんなことあるのか。
いや、絶対にない。
そんなことが出来たら、失った調査兵達なんていなかったはずなのだ。
でも、実際、多くの調査兵達の犠牲の上で、この世界はなんとか保たれているのだ。
それは、トロスト区への巨人襲来で多くの犠牲を払った駐屯兵達だって同じこと。
だけ特別なんてことは、ないはずだー。