第4章 ◇3話◇混乱
モブリットとリヴァイ班の精鋭達は、リヴァイの執務室にいた。
ローテーブルを挟み向かい合うように置かれたソファにそれぞれ座り、なんとかこの状況を理解しようと必死に考えを巡らせている。
でも、考えれば考えるほど、頭が狂いそうになるだけだった。
揺すっても反応のないだったけれど、死んでいるわけではなかった。
心臓も動いていたし、身体も温かかった。
そう、彼女は、生きていた。
巨人化出来る人間が現れたと聞いたときみたいに、今まで信じていたものが地面から崩れていくような感覚に襲われ、頭がひどく混乱している。
でも、確かに今、彼女は生きて存在していて、隣の寝室のベッドで眠っている。
ベッド脇に置いた椅子に座って彼女の寝顔をただじっと見ているリヴァイは、とてもホッとしているようだった。
ほらやっぱり、彼女は生きていたー。
リヴァイの背中は、嬉しそうにそう言っているみたいだった。
でも、そんなはずはない。
だって、彼女はー。
まだ起きていないことを確かめたハンジが、寝室から出てきた。
そして、ソファに座って頭を抱えるモブリット達の視線に気づき、小さく首を横に振った。
「遺体は…見たんですよね…?」
躊躇いがちに訊ねたエルドに、ハンジは目を伏せて頷いた。
思い出すのもツラい、惨い遺体を、ハッキリと見たー。
「アレは確かにアサミだった…。
リヴァイ兵長からもらった指輪を…してたから…。」
モブリットは、頭を抱えたまま震える声で言う。
アサミとは、訓練兵時代からの同期だった。
明るくて優しくて、友人もたくさんいた彼女は綺麗で可愛らしい女性だった。
それが、あんな風になるなんてー。
人のカタチをしていなかったアサミの遺体は、その指輪で彼女だと判断されたのだ。