第1章 鬼に成りし者と
俺は、守らなきゃいけないんだ。人間は食べない。本物の鬼になんかなったりしない。俺は救うんだ。大切な君も、この世界も。
「先生!どいて!」
無一郎の声が聞こえて、淳一は直ぐ様に避けた。
無一郎はあっさりと霞の呼吸で鬼を殺した。
「さすが先生ですね。カッコ良かったです」
「先生、鬼なのに鬼に立ち向かえるのすごい」
花怜と無一郎が口々に言う称賛の言葉に、淳一は嬉しそうに笑った。
――やっぱりお前が好きだ。
淳一はあってはならない思いを隠すように、花怜の頭を撫でた。すると、彼女は嬉しそうに笑った。
「あの女の人はもうダメだね。呼吸もしてないよ。埋葬しよう」
無一郎の言葉に、二人は残念そうに頷いた。
三人は女性を埋葬し、再び歩き出した。