第1章 鬼に成りし者と
「今、気付いたけどさ……先生、強いね。太陽克服してる」
花怜は無一郎の言葉にハッとする。
確かに、今は夕方だ。なのに、鬼になった先生は生きている。本当にすごい鬼だなぁ、と花怜は思った。
隣で、淳一が訳が分からないという顔をしている。
「先生、普通の鬼は日光がダメなんです。当たると死にます」
「ふく……」
花怜の言葉に、淳一はとても驚いている様子だった。
「暗くなったね。もうすぐ、本物の鬼が現れる」
無一郎の言葉に、二人は顔を強張らせた。
本物の鬼というのを知らない淳一にとって、怖くて堪らないのだ。
「キャー!!」
女性の叫び声が聞こえて駆け付けると、女性が男の鬼に喰われそうになっている。
淳一は目を見開き、走り出した。すると、鬼を蹴飛ばし、その上に馬乗りになった。
「ふっ、ふっ、ふぅっ……」
「お前、鬼クセによくも!」
鬼はそう叫んでいるが、淳一の様子がおかしい。
淳一は唾液を垂らし、息を切らしている。喰いたい衝動に駆られ、後ろに居る花怜を見た。