第1章 鬼に成りし者と
無一郎の言葉に、花怜と淳一は眉間にシワを寄せた。無一郎はゆっくりと話してくれた。
「そっか、話してくれてありがとう」
淳一は無一郎の頭を撫でて微笑んだ。そして、抱き締めた。
「君は偉いよ。記憶も過去も失っても尚、頑張って世界に貢献できるなんてすごいよ」
「そんな……」
「時には、泣いても良いんだ。人に甘えて良いんだよ」
そして、無一郎は泣き出した。それを遠巻きで花怜は見ていた。
すごい。さすが先生だ。花怜はそう思った。
泣き喚く少年は、本当に年相応に見えて、子供の弱き心が浮き出ていた。
そして、無一郎は淳一から離れた。
「ありがとう。僕は時透無一郎。えっと、先生って呼んでも良い?」
「もちろんさ。よろしくな、無一郎」
いつの間にか二人は仲良くなっていて、花怜だけが置いていかれていた。
「ねぇ、君は?」
唐突に、無一郎に聞かれた。
「私は、松田花怜。先生の教え子だよ」
花怜が答えると、無一郎は優しく微笑んでいた。
「先生……申し訳ないけど、口枷付けて」