第6章 那田蜘蛛山にて
「カナヲ!?」
しのぶは驚きの声を上げた。
なぜなら、カナヲは淳一の腕を掴んで、共に逃げ出したからだ。
師範に怒られたくない。だけど、この人達を救いたい。
「ありがとう、カナヲ」
淳一の笑顔に、カナヲの胸の鼓動は早くなっていく。この感覚は不思議と気持ち悪くなくて、カナヲはなぜか口角が上がった。
すると、しのぶが上から飛んできて、淳一を背中の上に乗って潰した。その際に、持っていた花怜をカナヲが引き抜いた。
「カナヲ、どうしたの?カナヲがこんな風に自分で決めるのは珍しいね。どうして、この鬼を守ろうとしたのかしら?」
花怜を抱えたカナヲは、姉であり師範のしのぶを初めて睨み付けた。
「私は、この人を守りたかっただけなの。この人は私の心を動かしてくれたの」
カナヲがそう言った時、カラスは吠えた。
「伝令!伝令!伝令アリ!炭治郎、禰豆子、花怜ト淳一、両名ヲ拘束!本部ヘ連レ帰レ!」
カナヲとしのぶはハッとして、倒れた二人を見た。
「炭治郎、花怜及ビ、鬼ノ禰豆子ト淳一、拘束シ本部ヘ連レ帰レ!」
「カナヲ。私はあと二人を拘束してくるから、この二人をお願いね」
そう言って、しのぶは飛び去った。カナヲは倒れた二人を抱き寄せた。