第6章 那田蜘蛛山にて
「飢餓状態で暴れた俺を彼女が止めてくれた。そんな時に無一郎が現れて、自分が鬼だと知った。色々あって、無一郎に保護してもらったんだ。この隊服も、無一郎からもらったんだ」
「霞柱様が……」
「あの、そのコイン……金貨って何なの?」
淳一がそう聞くと、カナヲはビックリした様子になった。
「これでいつも決めてるの。今回は裏が出たから話したの」
「自分では決めないの?」
「どうでもいいの。全部どうでもいいから、自分で決められないの」
きっと、何かがあったのだろう。花怜も同じようなことを話していた。
『もうなんかどうでもいいんです。何もしようと思えなくて、自分で決めるのが怖いんです』
「この子も君と同じことを言っていたよ。でも、未来の選択肢はたくさんあるんだよ。それを自分で決めていかなくてはいけないんだ」
高校を受験するにも、どこの学校に行くのか考えなくてはならない。これからどんな勉強をしていくのか、これからどんな仕事に就くのか、それも自分で考えなければならない。
同じようなことを花怜も言った気がする。
「心は人間にとって大切な物なんだよ。とりあえず、夢を見つければいい。みんなと幸せに生きる、とかさ。夢を持てば心は動き、生きる原動力となるんだ」
カナヲは彼の言葉を聞いて、強い風が通り過ぎて行った気がした。それほど、衝撃的で、心に響いたのだ。
「カナヲ!何で捕まえてないの!」
後ろからしのぶの声が聞こえた。カナヲは必死に考えた。
この人はすごい……救いたい。元の世界に戻してあげたい。それなら……。