第5章 藤の屋敷
「何だコレ!うめぇー!」
「伊之助、それは天ぷら」
驚愕の声を上げながら天ぷらを食べる伊之助に、炭治郎が話し掛けても聞きやしない。
「花怜、美味しい?」
「はい、美味しいです」
淳一は花怜の返事に胸を撫で下ろす。本当は自分も食べたいのに……。先程血を飲んだから幾分かマシだが。
四人は食事を終え、かまぼこ隊と先生が先に風呂に入った。その間、花怜は部屋で待っていた。
憧れの世界に居れているが、意外と辛かった。鬼を殺すことがこんなにも大変なんて知らなかった。
出来れば早く、元の世界に戻りたい。
人間でスーツを着こなしているいつもの先生を見たい。先生の授業を受けたい。
この恋は決して結ばれることはない。だって先生は、既婚者だから。
私の事好きになってくれませんか?……なんて言ったらどうなるんだろう。
あなたはそれでも笑ってくれるかな。
「花怜、風呂空いたぞ」
「はーい」
淳一にそう言われ、花怜は急いで風呂に向かった。