第5章 藤の屋敷
先生にも食欲はあるのか……。
花怜は彼の相談に頭を悩ませた。誰の肉を喰うことも彼には許されないのだ。
「先生……私の血でも飲みます?」
花怜の衝撃的な発言に、淳一は目を見開いた。
「えっ、マジで言ってんの?」
「先生のためなら大丈夫かなって」
私は先生のことが大好きだから、大好きな人のためなら命を落としても構わない。貴方が幸せならば。
淳一は申し訳ない気持ちで俯いていた。
「先生、どうぞ」
花怜は隊服を右肩だけ脱いで、首筋が見えるようにした。
「いいの?」
「はい」
淳一はゆっくりと近付き、花怜の首元を噛んだ。極上な血を味わいに涙が零れてきた。
淳一は少し飲んで口を離し、傷口を舐めた。すると、その傷口が消えたのだ。
「花怜、傷口が消えた!」
「えっ……?だから、なんか体が軽くなったんだね。もしかして、血鬼術?」
「えっ、血鬼術?」
花怜の言葉に、淳一は首を傾げた。
「血を使って出来る鬼の力ですよ。治癒が出来るなんて、ある意味一石二鳥ですね」
先生らしい優しい血鬼術だと花怜は思った。