第1章 鬼に成りし者と
気が付くと、花怜は地面で寝ていた。ゆっくりと目を覚まして見ると、よく晴れた赴きのある町に居た。
後ろを振り向いて見ると、スーツを着た淳一が立っていた。その様子がどこかの漫画のシーンと重なった。
まさかっ……!
花怜を見つけた淳一は、直ぐ様襲い掛かり、押し倒してきた。
彼はまるで猛獣の如く叫んでいる。その瞳は黄緑色に変わっていた。
そして、花怜は気付いた。彼は鬼だと……。
「先生!」
花怜は叫ぶように、淳一に向けて言う。
「先生、頑張って下さい!先生!頑張って!先生!!」
花怜がそう言うと、彼は静かになり、涙を流していた。
そして、次の瞬間。誰かが刀を持って舞い降りて来る。淳一は急いで花怜を抱き寄せ、避けた。
「何で、鬼のクセに人間を守ろうとするの?」
花怜は声がする方を向くと、そこには時透無一郎が居た。
淳一は大事そうに花怜を抱き締めている。無一郎にとって、気味が悪い情景だ。
淳一も少しずつ戻っていく理性で、自分は人間ではないことを悟った。