第2章 始まった関係
これ以上流されてはダメだと、橋本くんの体を押し返そうとした時…
「これは…想像以上にすごいな」
「…!」
背後から回された部長の手が、浴衣の上から私の両胸に触れてきた。
私が最もコンプレックスを抱いている、その胸に。
「や、やめて下さい…!」
「心配するな…悪いようにはしない」
そう囁き、部長はやんわり胸を揉んでくる。
その行為に自分でも無意識のうち涙を流していた。
「ちょっ…、先輩!?」
そんな私の様子に気付いた橋本くんが慌てたような声を出す。
一体何事かと、部長も手を止め私の顔を覗き込んできた。
「速水…そんなに嫌だったか?」
「…っ」
「部長のせいですよ!いきなりそんな事して恐がらせるから…!」
「うるさい…俺は速水本人に聞いてるんだ」
部長にそう言われ、橋本くんは不服そうに口を閉ざす。
私は自分の大きな胸がコンプレックスだった。
年齢を重ねる度、他人から好奇な目で見られる事には慣れていったが、それでも私には拭えない過去がある。
それは大学生の時付き合っていたカレから言われたひと言だ。
──巨乳は嫌いじゃないけど、ぶっちゃけそこまでデカいと引くわ…
あの時言われた事が今でも忘れられない。
それまで女友達には、「大きくて羨ましい」だの「巨乳は女の武器」だの言われ、愚かな私はそれを真に受けていたから。
元カレにそう言われて以来、私は男の人と付き合うのが恐くなった。
またあの時と同じ事を言われたら…と思うと。
今まで誰にも打ち明ける事のなかった話を、何故か私は部長と橋本くんの前で告白していた。
これもお酒の力だろうか。
「すみません…つまらない話をして……」
黙ったまま何も言わない2人にそう告げる。
けれどぐいっと涙を拭った時、部長が優しく頭を撫でてくれた。
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