第2章 始まった関係
そんな部長にはいくつも噂があった。
今は独身だが実はバツイチだとか、実は隠し子がいるとか、社内には愛人が何人もいるとか…
それでも"一度でいいから抱かれたい"なんて言う女性社員は1人や2人じゃない。
それくらい彼は、上司としても男性としても魅力的な人なのだ。
(だからって私…酔った勢いで本当に部長の事を…?)
「ふらふら1人で歩いてるところを捕まえたら…お前、俺に凭れ掛かって潤んだ目で見上げてきただろ?これはもう"そういう事"かと思ってな」
「ち、ちがっ…」
「それでお前を部屋に連れ込もうとしたところ、コイツに見つかったって訳だ」
そう言って部長は橋本くんの方へ視線を向けた。
「全く油断も隙も無い!そもそも部長を誘惑だなんて…いくら酔ってたからって清香先輩がそんな事する訳ないじゃないですか!」
「そ、そうです!私そんなつもりじゃ…」
「ほぅ…さっきは大人しく俺にキスされていたのに?」
「で、ですから…さっきは意識が朦朧としてて…」
「だが…嫌ではなかっただろう?」
「っ…」
耳元でそう囁かれ、カァッと顔が熱くなる。
それと同時に、部長とのキスの感触を思い出してしまった。
「先輩…今度は俺としましょう?」
「…え……?」
やんわり顎を掴まれたかと思えば、橋本くんの顔がゆっくり近付いてくる。
驚いた時にはすでに遅く、私は彼に唇を奪われていた。
「んっ…」
感触を確かめるように、何度も角度を変えてキスをしてくる橋本くん。
彼の熱い舌が入ってきた瞬間、びくりと肩を竦ませた。
「ふっ…、ん…」
「先輩…可愛い……」
うっとりしたような声でそう囁かれる。
(どうしてこんな事…)
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