第3章 部長との密会
部長と白鳥さんが休憩室を出ていった後…私は自販機の前に立ち、缶コーヒーのボタンを押した。
(あの2人…これからご飯でも一緒に食べにいくのかな…?)
そしてその後は、目眩く大人の時間を…
そこまで考えてぷるぷると頭を横に振る。
(私ってば何考えてるんだか…)
こんな事じゃせっかく居残りしてもまたミスを繰り返すだけだ。
あの夜の事は、もう胸の奥に仕舞っておこう…
部長と橋本くんが私に勇気をくれた"イイ思い出"として。
そう思い直し、私は自分のデスクへ戻った…
「なんだ速水…まだ残ってたのか」
「っ…」
それから小一時間…誰もいない部屋でカタカタとキーボードを鳴らしていると、突然背後から声を掛けられ思わず肩を竦ませた。
声の主はまさかの部長で…
「ぶ、部長…!」
「1人で居残りか?」
「部長こそ…白鳥さんとお帰りになられたんじゃ……ぁ」
驚きのあまりつい余計な事を口走ってしまう。
彼は一瞬訝しげな顔をした後、やれやれといった様子で私の隣に腰を下ろしてきた。
「盗み見とはイイ趣味だな」
「ち、違います!さっき偶然お2人をお見かけしたので…」
「確かに白鳥と一緒にいたのは事実だ。彼女、なかなか俺を放そうとしてくれなくて参ったよ」
「……、」
その言葉に少なからずショックを受ける。
やっぱり部長と白鳥さんはそういう…
「フッ…。お前が何を勘違いしているのか知らないが…俺と白鳥は男女の仲じゃない。今だって仕事の話をしていただけだぞ」
「…え……?」
「お前はどんなヤラシイ想像をしていたんだ?」
「っ…」
私の心の中を見透かすように、部長が意地の悪い笑みを向けてくる。
そして私の顎をくいっと軽く持ち上げた。
「お前が想像してた事…当ててやろうか?」
「わ、私は別に…っ…」
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