第10章 影との遭遇

「花ちゃん　　
少し…落ち着きなさい…嬉しい、けど…

──…えっと…

サスケの…、前だよ？」



その言葉に、私は渋々とカカシさんから距離を取る。

愛おしい人の顔を見上げると、いつもの気遣うような視線が少し安心したように緩んだ。

カカシさん…

────…本物…



「サスケ、今日はずっと…俺の事監視してた、でしょ？

…一体どういうつもり？」



「ああ、気付いていたか

───…お前には何らかの術が掛けられている。

昼間の様子からは発動していないが、恐らく…夜には発動するだろう。悪いがその動向を、監視させてもらっていた」



彼はサスケ君に訝し気な視線を送る。



「…術？

はぁ…何の話か
───…もう少し分かるように話してくれる？」



そしてサスケ君に向き合うと、不安そうな私の掌を取り、指を絡ませてくれた。

そのままギュッと強く握り込まれる。

それだけで、安心して…上手く呼吸が出来る気がした。


離れたくない…


だってまた離れたら…今度会うカカシさんは…偽物かも知れない。



「単に任務を遂行している
こいつに狼藉を犯した犯人がいるとすれば、
疑わしきは "お前" だという事だ。

少なくとも姿形は間違いなくな。
俺も昨夜会っているから、間違いない。
　
言っておくがこいつの見た夢や、妄想ではない」



「な、何だって？！
…つまり…君は、俺とそっくりな奴と、会ってたって事…？

そいつが君に、この跡を…？
──って…そう言えば…君は…昨日の朝も…変な事言って…」



そっとカカシさんの指先が首筋に触れてビクッとする。



「あれ…本当…だったの？」


『…っ…私 カカシさんだと…思って…

だって、まるっきり本人…で…

まるで、分身みたいに…

────だっ、だから…っ…私…っ！』


「分身…──？
誰かが俺に変化でもしていたって言うのか？！

そ、そいつに…っ、一体何されたの！？」


今度はカカシさんが動揺して、私を抱き締める番だった。

強く描き抱かれ、横からは最早諦めたようなサスケ君の大きめのため息が聞こえてくる。


「はぁ…2人とも落ち着け

全く…夫婦揃ってこれか…

────そんな事では
解決するものもしなくなるぞ」


「わ、分かったから！
早く続きを説明しろ！」