第10章 影との遭遇
先程も力一杯振り解いてしまったこの腕を、もう一度…拒否する事が辛い。
…───辛すぎる…
本当は、縋り付きたい…
抱き締めて欲しい…っ
本物だよ…って、安心させて欲しい…
(…早く…サスケ君…っ…の…ところへ…)
「そいつは本物だ、安心しろ」
すると目の前に、今一番頼りにしていた人が突如として現れる。
そして今一番知りたかった答えを口にしてくれたのだった。
『…さ…サスケ君っ…!?』
「────サスケ!…っ」
驚いている私たち2人に向かって冷静な
いつもの読めない表情を向ける。
「花、安心しろ
そいつは "本物のカカシ" だ」
そうしてもう一度…ハッキリとそう告げた。
私はその言葉に涙腺が緩み…溢れる涙をそのままに目の前にいるカカシさんに思いっきり抱き付いていた。
「…っ…え…、え?…」
戸惑った彼の気配が伝わって来るが、私はやっと安心できる場所に身を任せる事ができた事に安堵し…涙を零す事しかできない。
サスケ君の前だという事も忘れ
カカシさんの首に回した腕に力を入れ…
その首筋に顔を埋める。
尋常ではないその様子に…カカシさんも安心させるように強く抱き締め返してくれる。
「…花ちゃん…
…一体…どういう事?」
「仕事は山積みのようだったが、
抜け出して来て、話す時間はあるのか?」
「…ああ…
説明、してくれるな
朝のこともまとめて──…全部だ」
「勿論だ
その為にここに来た」
暫く沈黙の中、2人が視線を交わし合っているのが分かる。
その内、気遣う彼に肩を触れられ離れるように促されるが 私はいやいや、と子供の様に首を振った。
軽く溜息をついた彼が、私を抱えるようにして 我が家のリビングにサスケ君を招き入れるのを…彼の腕の中、目を瞑りながら確認する。
───それでも、離れようとは思わなかった。