第10章 影との遭遇
さっき"他の男に触られたままに"…と口走った。
このカカシさんは…自分がキスマークを付けてない…と言っている。
だから…夜に会う彼じゃない…のかも知れない。
サスケ君が、記憶は正常だろう…と言っていた
"本来のカカシさん" なのかもしれない。
…でも…
…本当に…──?
本当に、今朝のカカシさん、なの…?
昼間の記憶を影が引き出せるのだとしたら?
私を、混乱させる為だとしたら…?
…やはり
────やはり…分からない…ッ
『あれは…カカシさんに付けられた、と言いましたが…
でも、カカシさんでは…なかったかも…知れません』
「…?…
言ってる意味が…
よく分からないよ
今朝は動転してしまって、
君の話をちゃんと聞けなかったから
…何とか合間を縫って話を聞きに来たんだ。
君が、どんな目にあって…何を考えているのか、話して欲しい。
今度はちゃんと聞くから…、お願いだよ…っ」
気持ちがぐらつきそうになる。
心配してくれている彼の想いは、嘘には思えない。
向けられる視線も、掴まれた腕も…耳に心地いい声も…触れた唇も…吐息も…
───…全てが、私の大好きな "それ" なのに
『…さ…サスケ君のところ…へ…行か、なきゃ…』
「…っ…」
瞬間、彼の身体が強張る。
「サスケが…相手か…?」
カカシさんの瞳に暗い、影が刺す。
(…っ…な…!)
『…っ…ち、違います!!
なっ、なんで…そんな話に…っ
…そんな訳ないです!!は、離してください!
ただ……い 今は、カカシさんと…お話する事は…出来ません』
「────何故!?
キスも嫌?触れられるのすら…嫌なの?!
一体…何があった!?」
『そ、それは…っ』
言葉に詰まる。
もう…このカカシさんが何を覚えていて、何を忘れているのか。
本物なのか
偽物なのか…
何処からどう伝えたら、彼に納得のいく説明が出来るのか───…混乱した頭では何もかもがもう良く分からない。
『…っ…』
(せめて…本物かどうかだけでも
────…見分けが付いたら…)