第10章 影との遭遇
これは…どっち…?
───どっちのカカシさんなの…?
顔を横へ向けているので、今度は性急な舌が首筋を這っていく。
『や…っ…めて…くださ…』
い、いつもと時間帯が違いすぎる。
チラリと時計を見る。
「…どうして?…ん…っ…他の男に、
触られたままに…ちゅ…っ…しろって…?」
身体の線をなぞって来る指先を必死の思いで払い除けて行く。
ダメだ…呑みこまれ…っ…ては…
──…19時
こんな早い時間は、初めて…
(様子を見に…)
確かに、朝のあの去り方では気になって様子を見にくるという事もあるかも知れない。
でも…
カカシさんの指先が胸元を開け、昨日の印を上書きする様に吸い付いてくる。
『…だ…ダメっ…!』
分からない…
───見分けが付かない
どっと不安が溢れて来て目の前の愛する人に縋り付きたくなるのに、それも出来ない。
サスケ君はまだいない。
私では、見分けられない。
「どうしたの?
…俺とするの、イヤ…?」
どうしよう…、どうしたらいい…?
『ち…ちが…っ』
(…サ、サスケ君…!
────…サスケ君…!!
…────助けて……)
『…っ…ごめんなさい!カカシさん!!』
私は彼の脇を擦り抜けると、反対側にある勝手口から飛び出した。
「ちょっ…!
待って!花ちゃん!!」
咄嗟に腕を取られるが、力一杯振り解く。
顔を上げると、傷ついた顔をした彼の瞳とぶつかって胸が痛んだ。
だが他にどうしようなもなく、奥歯を噛み締める。
『ご…ごめんなさ、い
でも…今は、お話…出来ません
事情は、明日…お話します、だから…』
そう言って、目を伏せ…その場を駆け出した。
しかしそう距離を離せずに、直ぐに目の前に瞬身して来たカカシさんによって道を塞がれてしまう。
「待ってってば!!
どうしたの一体…っ、何処にいくつもりなの?!
それに…もう暗い…。昨日の今日で、何があるか分からないだろ!?
───君は危ない目にあったばかりの筈だ!」