第10章 影との遭遇
「その可能性も無いとは言えないが
…──では一体、何のための嘘だ?
あの妙な茶番劇を起こして、俺やサクラを巻き込んだ。その上自分の妻を悩ませている。
…本当は、お前にもわかっているだろう
少なくとも俺には、あのカカシが演技をしているようには見えなかった」
それは…その通りだ。
カカシさんに、こんな風に私を混乱させる嘘をつく理由もない。
私はガックリと肩を落とす。
「だがお前の推察はあながち的外れでもない。
…恐らくは影分身に近い術ではある。
ベースを作っているのは間違いなく本人だからだ
…だが…あいつの意思の元ではない。
───詳しい事は今夜
…写輪眼を使って暴く」
サスケ君はハッキリと私を見つめてそう口にした。
『…今夜…?』
先程カカシさんとあんな一悶着をした後に…また今夜…何食わぬ顔をして、帰ってくる…とでも言うのだろうか?
また、今日の昼間の出来事を忘れて…──?
そして、また思い出したように混乱した振りを…するのだろうか?
カカシさん本人をベースとしていると仮定したら、もしかしたらその記憶を"影"の方は意図的に掘り起こせるのかも知れない。
本体のカカシさんには、それが無理でも…
(…いやだ、もう、会いたくない…)
そうは言っていられないとは分かっていても…また心を揺さぶられる事は分かりきっていた。
「2日続けて夜に現れた事を考えると、恐らくは今夜も現れる可能性が高いだろう。
…今夜は、俺がお前の家の外で見張っておく。
そして、一応本人ではないと確認する為…それから本人に術の形跡がないかを確かめるために、
火影室にいるカカシには、俺の影分身を付け 別途見張らせよう」
『…わ、わかった』
術の正体を暴くのは容易なことではない。サスケ君がいてくれた事は今回の件では不幸中の幸いだったのかも知れない。
写輪眼を操れるものは、もうこの里に 彼を於いて他にいないのだから…