第10章 影との遭遇
「昨日のカカシには一瞬、違和感を感じた。
だが直ぐに勘違いだと思い直し、あの場では…言及しなかった」
──…違、和感…?
ふと昨日カカシさんと話していたサスケ君の様子が…確かに"一瞬"おかしかった事を思い出す。
(───…もしかして、あの時…?)
『…どんな違和感?!
何がおかしいと思ったの?!』
思わず身を乗り出した私に、動く力が残っている事を見て安心したのかサスケ君が私の側に来ると、少しだけ距離を取った場所に腰を下ろした。
まるでそこで一息ついたかの様にため息をついてから、冷静な瞳をこちらに向ける。
「興奮するな、落ち着け」
言い聞かせるようにそう言って
また静かに口を開いた。
「気配だ」
『…気配?』
そんなの…私には、全然分からなかった。
昨夜カカシさんが現れた時…寧ろ私は、身近な気配に安心感すら覚えた。
馴染んだ感触で頬に触れられ、安堵し いつもの暖かい目で見つめられ、涙が止まった。
「お前が気付かないのも無理はない。
それ程微かなものだった。
俺から見ても、あれはカカシそのものだった
あの時…少しでも異様な気配があれば、俺はお前を置いてあの場を離れたりはしなかっただろう。
────つまりあのカカシに、お前に対する悪意は感じてはいない」
微妙な気配の違い…
悪意はなく、姿形、内面に至るまでが…ほぼ本人と言っても過言ではない…
それを生み出す術、と言えば────…
一つだけ私が勘違いしても問題ない術がある。
『影分身…?』
期待を込めたのだが、呆気なくその答えは却下されてしまった。
「いや……影分身ならば、影が消えた瞬間に本体へ情報は集約される。
記憶が欠如している事はあり得ない」
『…で、でも…
理由は分からないけど、昼間のカカシさんが嘘を付いているとしたら?』
影分身であって欲しいという願望が大きいのか、諦められず食い下がってみる。