第10章 影との遭遇
シカマル君はこの2日間、カカシさんの夜通しの作業につきっきりだった…と話してくれた。
夜中に自宅に帰る様子などはなく、その質問にすら怪訝な顔をされた。
私はサスケ君の言葉に、自分が玄関先で佇んでいた事に気付き やっと鞄から鍵を取り出し扉を開けた。
「ごめんね…鍵を、忘れちゃって」
そう言えば、違和感の最初の日…カカシさんはそう言っていた。
あれは……鍵を忘れたのではなく、はなから持っていなかった──…という事だったのか…
もうそんな事 この状況でどちらだっていい。
だが不穏な想像は頭にチラついて冷静になれる気配すらない。
段々とそんな自分に苛立ちを覚え、
崩れるように、ソファに身体を沈ませた。
「悪い想像で頭を膨らませるのもいいが、
先ずは真実を解き明かす事が先だ」
『…わかってる』
「その後にでも好きなだけ落ち込め」
『…わかってる!』
「仮にもお前は火影の妻だろ!
────しっかりしろ!」
その言葉に、やっと少しだけマシな返答をした。
『…ご…、ごめん……うん…
…ちゃんと、考える…
…ごめ、ん…サスケ君の考え…
────話して、くれる…?』
するとやっとサスケ君は明らかにホッとした顔をする。
そして思い出す。
こういう場面を、サスケ君は最も苦手とするのだ、という事を。
何と慰めたらいいか、声をかけたらいいか…恐らく考えるだけでも戸惑ってしまっていた筈だ。
(…ダメだ…ちゃんと、しなきゃ…
────凄い、迷惑かけてる)
「少なくともさっき火影室で話していたカカシは、嘘を言っていない。
記憶も正常なのだろう
残る可能性は、一つだ」
もういっその事、本当に全部が…私の夢だったら良かったのに…
『…うん…
あのカカシさんは、何らかの術で現れてるんだね』
カカシさんの身体に異常がなかった、という事は素直に嬉しい。
でも、これはこれで信じたくなかった。
じゃあ一体、誰だったの、何だったの?
「さっきお前に言ったな
俺には少し心当たりがある、と」
気になっていたサスケ君の言葉に、目線をあげる。