第10章 影との遭遇
数時間後───…
サスケ君と共にシカマル君への聞き込みを終えた私は…告げられた事実を受け入れられず目の前が真っ暗になっていた。
何かの、間違いではないか…
彼の、勘違いではないか…
頭の中ではそんな可能性を延々と考えてしまう。
その後、サスケ君に引きずられるようにしてアカデミーを後にした事も…移動中、気遣うような視線を何度も向けられていた事も…微かに頭の片隅で認識していた程度で、気付くと私はサスケ君に連れられて 自宅の前にいた。
茫然と、我が家を見上げる。
カカシさんと結婚後
…共に暮らすようになった 赤い屋根の小さな一軒家。
まだ住むようになってからは日が浅い。
だが、2人で選んだ
思い入れのある我が家だった。
(私たちの…家)
突然身体が硬直して、胃の中の物を吐いてしまいそうになり 口元に手を当てた。
『…っ…』
治るようにと…何とか呼吸を整える。
「───おい、しっかりしろ」
サスケ君の手が気遣わしげに背中に触れ、
戸惑いながらもゆっくりとさすってくれる。
この家で…2晩…一緒に過ごした…あの彼が…
あれが…
カカシさんじゃ、なかったなんて────…
そんな訳ない
私が…カカシさんを間違えるか訳が…っ
だって…だって、たくさん話したし…身体だって、繋げたし…
だから、もし違うなら、絶対に、気付くはず…っ
────絶対に、気づくはず
あれは確かに、
確かに…────カカシさんだった…
何で、どうして…どうなってるの…
────何が起きてるの…
「落ち込んだって事実は変わらないぞ
…少し冷静になれ」
そう言いながら、サスケ君は何度も背中をさすってくれた。
お陰で吐き気は治ってくるが…優しくされると堪えている感情が溢れそうになった。
『…だ…っ、だって…』
また泣きそうだ。
だって…そんなの無理、無理だ…っ
私も忍の端くれだ。話を聞く前に…そういう事もあるかも知れない…という、多少の覚悟はしていたつもりだった。
でも突き付けられた事実には、情けない事に…どうしても心が付いていかない。
「…はぁ…
まあ、気持ちは分かる…とにかく、鍵を開けてくれないか
中で話そう」