第9章 任務
サスケ君はスッと立ち上がると私を見つめる。
(え?…い、今から?)
彼のその行動の早さにも、目が白黒してしまうが…今日は午後から行くつもりだった病院での仕事が気になって、一瞬躊躇してしまう。
…が、これって現状(直接ではないにしろ)火影様から任務を授かった…という形だ。
里の忍には、任務が何よりの最優先事項。
通常のどのような仕事を差し置いても、為さなければならないモノ。
何より、火影であるカカシさんのあの状態は…それこそ里にとっての一大事。
職場より優先すべき事は明白だった。
直ぐに私は、この2日間の記憶を遡る。
(…そう言えば、昨日の朝に…)
『シカマルくんと…サクラちゃんが…』
一緒に徹夜明けをした…という話をしていた。
「…何だと?」
一瞬驚いたような顔をした彼が 次の瞬間、まるで可哀想なものを見るような冷たい視線を向けてくる。
(…な、なんでそんな怖い顔…)
「…お前、
昨日サクラとは何時間行動を共にしていた?
いくらでも聞く機会があった筈だろ?
…違和感を感じていたのなら、カカシが変な誤解をする前に
せめてお前の中だけでも納得する理由を探しておくべきだったんじゃないのか?
…少なくとも、
未然にこの事態は防げた可能性がある」
(…た、確かに…)
サスケ君の最もな意見に、ガクッと肩を落とす。
もう、こちらが先輩だという威厳はほぼゼロに近い。忍としての実力には、雲泥の差を感じてしまう。
…と、俯いた頭の上からプッと吹き出す声が聞こえた。
『?』
「お前の愚鈍さは相変わらずだな
そう言えば昔も、お前とよくこんなやり取りをした覚えがある」
『そうだね…
サスケ君は昔も今も、容赦がないなぁ…まぁ、いつも返す言葉もないのは 私の方なんけどね…』
「ふっ…だろうな」
そう言って目を合わすと、互いに笑い合った。
『ごめんね…あ、でも…"裏"も取れるし、サクラちゃんも一緒に…スリーマンセルで動けばよかったのかな…?』