第9章 任務
ナルト君の家の質素な食卓の椅子に向かい合って座り、私は簡単に事の経緯を説明する事にした。
一昨日からのカカシさんの記憶がおかしい…ということを。
「なる程な…
それで自分が付けたキスマークを、まるで他人が付けたかの様に言っていた、という事か…
はぁ…話だけ聞くと、
あいつもかなりのウスラトンカチ…というワケだな」
『…う、うん
お恥ずかしい限り、です』
本来、夫婦の秘事であるべきそこのくだりは…もう赤面せずには説明出来ない。
単なる馬鹿げた夫婦のいざこざに、
巻き込んだだけのように思えてしまう。
…いや、実際 そうなのだが…
勘違いにより、"任務"として巻き込まれたサスケ君にとっては迷惑以外の何者でもないだろう。
そもそもカカシさんの事情を知っている身としては、この件を事件とは受け止めていない。
こんな馬鹿げた"任務"
いっそのこと放り出してくれても構わないというのに…
『いいの…?サスケ君
こんなバカバカしい任務…
私…──何か申し訳ないんだけど…』
「気にするな
カカシの気が済むまでは、付き合ってやるつもりだ。
あいつが、昨夜の事を忘れているとは言え…あいつ自身にとって重大だと思われる案件を、一時帰還中の"問題児"に任せた。
…それだけで俺が請け負う理由としては、充分だ。特にここでする事もないしな」
『…サスケ君…』
カカシさんの気が済むまで…か。
少なくとも記憶が戻らなきゃ、彼の気は…済まないだろうな…
「カカシの意図する任務は、
"お前に狼藉を犯した者を探し出す"
…という、お前にとっては馬鹿げたものだろうが 本来の問題は、そこではない。
今回の件で最も危惧すべき点は…"何故、カカシの記憶が失われているのか"だ。
俺達はそれを解き明かし、カカシに提示する。
その事が問題の解決となるだろう」
『そっか…うん、そうだよね
ありがとう、サスケ君
その…宜しくお願いします』
私は冷静に事の経緯を分析してくれる彼に、
心から感謝と、お詫びの気持ちを込めて頭を下げた。
「で、裏は取ったのか?」