第8章 完璧と言われた影に(カカシ視点)
俺、は…
何かを、忘れているのか──…?
俺が…付けた
…いやっ…
付けてない、そんな事は記憶にない。
何故あんな事を言った?
あの子が言っていた事に必死でヒントを探すが
答えが見つからない。
(…まさか…
…まさか…───相手は……
…サスケ…なのか?)
俺は混乱する頭を抱えて、自分には立派過ぎる"火影の椅子"に崩れる様に腰を下ろした。
そこへ身体を沈み込ませると、少しだけ 冷静になる。
自分には、常に冷静な判断が求められているのだと…思い起こさせる。
…今サスケを追いかけても…きっと巻かれるだけだ。
情けないが今の俺では、
あいつには敵わない。
一手も二手も、先を行かれたかつての幼かった弟子を思い、酷く重い溜息が漏れた。
「大丈夫か?サクラ…
…すまない…俺にも…何がどうなっているのか…」
俺の言葉に微かに反応したサクラは、傷付いた心を必死で隠す様に────可哀想になる程、苦しげな笑顔を…顔に貼り付けた。
「はい…でも…多分
カカシ先生程じゃありません」
「え?」
「私は…ずっと前から知ってたので…
…サスケ君の気持ち…」
──…サスケの気持ち?
ずっと前から…
そのセリフに、俺は顔を上げサクラに視線を向ける。
「まだ彼が抜け忍になる前、
アカデミーにいた頃からです
…サスケ君は、ずっと…
花さんの事…好きだったんだと思います」
それはまるで諦めた様な笑顔だった。
いや違う…
まるで…全てを、受け入れているかの様な…
その少し大人びた横顔に、胸が打たれる。
(…ああ…色々考えちゃってたのね…
…傷付いて、受け入れて…
───それでも…
周りのせいにする事は、選ばないんだな、お前は…
…えらいぞ、サクラ…)
俺は立ち上がると、華奢な身体付きの元班員に歩み寄り…ぽんっと、その小さな頭に掌を置く。
「そう、だったのか…知らなかった…
だがあいつがあんな事を言うなんて…
…俺達にとっては…
嬉しい様な…複雑な心境だな…」
「…っ…」