第8章 完璧と言われた影に(カカシ視点)
サクラと2人残された火影室は、ガラリとして…先程サスケが俺の愛してやまない"妻"を連れ去って行った窓からは心地よい風が吹き込んでくる。
まるで何事もなかったかの様に、カーテンが微かにはためいていた。
「花ちゃん…っ!」
瞠目してすぐにハッと、視線の端のサクラを見る。
俺と同様──…かなり打ちひしがれた様子だった。
この状況で…無理もない。
だが 涙を零すでもなく…ただその場に茫然と佇んでいる。
「…サス…ケ君…っ」
先程のサスケの行動は、俺を困惑させただけではない。サクラの…長く淡い恋心も…酷く傷付けた筈だ。
(何だ───!
一体…っ、何が起きている?!)
理由なくあんな事をする奴じゃない。
サスケは変わった筈だ…っ
理由…なく…
────理由…?
サスケが…
そうだ、あの子に…何だって…?!
"…愛を…告白した…"
───あいつはそう…言ったのか…?
あのサスケが?
あいつの口から出て来る言葉としては、にわかには信じ難い。
愛とか、恋を 口にする様なヤツじゃなかった。
だが…サクラにもハッキリと、
言い放っていなかったか…?
"花が好きだ"…と。
心が騒ついて落ち着かない。
(…くそっ…!なんなんだこれは…っ)
あの子の首筋と胸元に見えた、無数の…唇で、吸われた様な形跡…
あれを見た途端…
心は怒りで支配され、咄嗟に頭は冷静な判断を下せなくなった。
あの子が何かを必死で訴えているのに…
それを静かに、ただ聞いてやることすら
…出来なかった。
ただ…あれを付けた奴を…
持てる力全てで、打ちのめしてやりたい、
そんな衝動に…駆られて…
俺しか知らなかった筈のあの吸い付く様な柔肌に…唇で…───触れたヤツがいる…そう思うと…っ
「…くっそ…!」
サスケは昨日、花ちゃんと共にいた、のか──…?
"思い出してください!"
"サスケ君!カカシさんは、昨日の事を覚えてないの"
"私は狼藉など、誰からも受けていません"
"覚えてないかもしれませんが……
これを付けたのは…あなたです"
乱れた思考の中で、あの子の言葉を一つ一つ思い返してゆく。