第7章 絡み合う想い
思わず込み上げてくる涙を必死で飲み込もうとするが、その努力も虚しく頬に伝い落ちる。
「え……?
何?どうしたの?
え?!…泣いてるの?!」
慌てて椅子ごと私の方を向き、顔を覗き込まれる…が、何て言ったらいいのか分からない。
結局先ほど懸念していた通りの結果になっている。
きっと覚えてくれているだろうと、何処かで楽観視していた。
こうなってしまうともう彼を責める訳にもいかない。
言葉が…見つからない。
『カカシさん
一昨日の夜から…ずっと、この部屋に?
あの、他に何か…覚えてる事は、ありませんか?』
ポロポロ泣きながら必死で言葉を手繰り寄せる。
「え、どういうこと?
俺、君に何かした?
…それとも誰かに…何かされたの?」
『…っ…』
あぁ、昨日から泣いてばかりだな、私…
嗚咽を上げる私に、カカシさんもどうしたらいいか分からない様子だ。
「ね、落ち着いて?
…ちゃんと聞くから、話して
………?
───……ちょっと、待って
何それ、見せて」
カカシさんの腕が伸びて来て、すっと首筋をなぞられる
「花ちゃん?なに……この痕」
その言葉にハッとする。
昨日、“牽制"だと言って…カカシさんが付けた、痕(キスマーク)
だけど本人は、付けた事すら覚えてない…のだから、これって…
サーっと青褪める。
咄嗟に私はカカシさんの手を力一杯払い除けてしまった。
『な…なんでも、ありません!
虫に…さ、刺されたのかな?』
自分でも明らかに動揺している声だと分かる。
こんな嘘くさい嘘、誰も信じないだろう。
案の定、カカシさんに襟ぐりを無理矢理開けられてしまい、泣きながら直ぐに抵抗するが腕を掴まれる。
『…やっ』
「ちょっ、誰が、つけたの?こんなの
…ねぇ、どうしてごまかすの?」
カカシさんの目、見た事ないくらい…怖い
あなたですなんて言って信じてくれるなど、もう楽観的な事は考えられない。
でもそれが真実で、それ以外に答えようもない。
『お、ぼえてない、かもしれませんが…付けたのは…あなた…です、ゆ、昨夜』