第3章 違和感
「大丈夫だよ
今日作ってくれたお重箱のお弁当、すごいたくさんあったから…お昼に残して、夕飯にしちゃった
すごく美味しかったよ」
『え?…あの量を一人でですか?
…皆さんに食べてもらわなかったんですか?』
上着を脱いでソファでくつろぎはじめたカカシさんに視線を投げかける
「あげるわけないでしょ?
愛妻弁当、他の男に」
いたずらっぽく言われて思わず笑ってしまう
変な所で独占欲があるんだから…でも、嬉しい
『じゃあ、お風呂用意しますね』
「いや、自分でやるよ
君は疲れてるだろうから、休んでて」
『いいえ、疲れてるのはカカシさんの方です
大人しくくつろいでいて下さい』
私は自分でしようとするカカシさんを無理やりソファに座らせ、お風呂の準備を始めた
疲れているだろう夫の体調を考え、少しぬるめにお湯を沸かす
ゆっくり時間をかけて入ってもらおう。
少しでも疲れがとれるように…
カカシさんの着替え用に部屋着を用意していると、優しい気配を後ろから感じ抱き締められた。
その体に馴染んだ彼の温もりと匂いに、ホッとする
いつの間に私は
この人の側が これ程に安心出来る場所になったんだろう?
昔は寄り添うだけで心臓が破裂しそうな程緊張していたのを思い出す
…憧れの、手の届かない人…だったのにな
───…人生って不思議だ
「一緒に入らない?可愛い奥さん」
そういえば昨日もこうして誘われて断ってしまった。
私だって少しでも彼と過ごしたいし、せっかくのお誘いには 乗りたいけど…
(…でも、カカシさんのこの感じ…まさかお風呂でする気なんじゃ…)
『…今日はもうしませんよ?』
訝しげな視線を向けると、カカシさんが慌てて目を逸らす
(…やっぱり…)
思わず吹き出してしまう
一緒には過ごしたいが、流石に身体はキャパオーバーだ
「で でも、その気になるかもよ?」
『そういう事するなら、入りません』
冗談めかして言うと心底残念そうな顔を見せる
(…本当、こんな会話普通に出来る様になるなんてね)