第22章 未来を見据えて(3人視点)
(違う…同じじゃない
他の誰かが作ったものや
自分で作ったものとは違う
これは花ちゃんの味だ)
やっぱり"お母さん"なんだな…
何が違うと言われれば、うまく説明が出来ない
だが今では俺の生活の一部、だから 分かる
花ちゃんは結婚してから一度だって…俺をキッチンに立たせようとしなかった。
俺が全て出来る事も知っていて
何なら、得意な事も知っていて──…
自分だって楽な仕事に付いている訳では無いのに、毎日かかさずに…殆ど帰れない俺の為に アカデミーにこの味を 届けてくれていた。
まるで知っていたようだ────…俺が自分で作る毎日のその食事に…辟易していた事に
(それを当たり前だなんて
────…思ったら、ダメだった)
そんな日常が…──ある日突然無くなる怖さを
俺は知っていた筈なのに
「あらあら…泣くほどに美味しかったですか?」
「は…い…
泣く、ほどに…美味い
───…です」
気付けば俺は 泣きながら笑っていた
(家庭の味なんだな
これが…───今の、俺の)
花ちゃんが、俺の為に…
毎日欠かさずに作ってくれていた物
当たり前だと、思わせてくれていたもの