第22章 未来を見据えて(3人視点)
「悪かった…
こいつが泣いてる理由はよく分からない
──…が、そうだな…俺が泣かせた」
「それ以外ないでしょ」
そう言ってから 花の頬をそっと撫でるその顔は、俺の見たことのない表情だった。
咄嗟に俺の闘争心に火が付いた
花を、諦めたくないと…
「俺のいない隙にこんな事するのは…今回限りにしろ、サスケ
…じゃないと流石の俺も、黙ってないよ」
いつもは様相を崩さないカカシの その内に秘めた怒りがひしひしと伝わって来た。
こいつを他の誰にも譲るつもりはないとその目が訴えている。
咄嗟に出た言葉は 俺の気持ちを加速させた。
「約束はできない」
────…
───コンコン
ノックと共に微かに開けられる扉
「カカシ君、入ってもいい?」
穏やかな声で義母から入室を問われ、俺は本に落としていた目線を扉に移すと慌てて居住まいを正す
「はい、どうぞ」
遠慮がちに開かれた扉から顔を出した義母が「お邪魔じゃなかったかしら?」などと言いながら、にっこりと微笑んだので、何故か赤面してしまった。
「お仕事の後でしょ?
お腹が空いてるんじゃないかと思って」
見るとお盆の上には 湯気の立つ湯呑みと夜食と思われるおにぎり。
「すいません
どうか、お構いなく」
だが途端に空腹に気付いて腹の虫が鳴る
「ふふ…花が顔を出す度にぼやくんですよ
"カカシさんは放っておけば 忙しさにかまけてちゃんと食事を取らない"って…
だから、ちゃんと食べて下さい
そうすれば、この子も安心しますから」
そう言われておずおずと 俺は目の前に差し出されたお握りに手を伸ばした
「……じゃあ、頂きます」
「ええ、どうぞ」
それを一口頬張れば 思いがけず涙が出そうになる
「あ…はは…
花ちゃんと…同じ味、だ」
ここ数日…当たり前に食べていた花ちゃんのご飯を、食べれなかった。
胃の中に優しく咀嚼され 落ちて行く──…暖かな、味。
「あら、ふふ、そうですか?
おにぎりなんて
誰が作ったって一緒だと思うけど」