第18章 記憶の消滅R18(3人視点)
私の言葉は、サスケ君に届かない。
虚な瞳で、囁かれる。
「キスを受け入れたら
鎖を外してやってもいい」
そうして寄せられた唇に、反射的に顔を背ける
だって…
受け入れたからって、サスケ君は救われない。
もし彼を好きにでもなれたら
──痛みを…分かち合えるのだろうか?
でも…
私は、カカシさんを愛している。
自分の命より重い存在で
彼の為なら、何だって出来る程に。
それは変えられない、変わらない。
ああ…このままじゃ…
私は暗い闇に囚われたサスケ君に…きっとこのまま凌辱されてしまうのだろう──…
そうなった先…カカシさんは、と考える。
私を傷つけた彼を、果たして許す…のだろうか?
──…そして絶望する…
とてもそんな楽観的な結末を、思い描けなかったからだ。
ダメだ…
ダメ──…っ
目の前しか見えなくなってる
どうしよう…
──…私は…どうしたら…
このままではサスケ君は…全てを失ってしまう
必死で彼を救った人達…全員の…
信頼も…
友情も…
思い遣りも…
──…そして居場所すら、きっと失ってしまう
そのすべてを…彼が本当に手放しても良いと考えているとは、どうしても思えなかった。
私なんかの為に…
──本当に、全てを失うつもりなの?!
そんなの…っ…ダメだ!!!
────絶対にダメだっ!!!
鎖を外して欲しかったからじゃない。
私は彼に、自分から顔を寄せた。
思いを伝えるように唇を合わせる。
そうする事で──彼の何かが変わるのか、なんて…分からない。
でも他に 思い付く事なんて、何もなかった。
────…
花が悲しげな顔をして、傾けた顔を、そっと近付けて来た。
俺はそれを受け入れ、目を閉じる
夢にまで見た、花との口付けは 悲しい、味がした。
どうせ直ぐに無くなる物だと 我を忘れ、キスを深めた。
甘い、
愛しい、
────手に入れたい。
頭に浮かんでくる思いはどれも身勝手なもので こうして無理矢理にでも抑え込まなければ、こんな瞬間すら…決して、手に入らなかった。
そうしてゆっくりと、この夢のような時間は…俺の手の中を──…残酷に、すり抜けていくのだろう。