第16章 初めての嘘R18
「俺のことは気にしなくていいよ」
私の視線に気付いた彼は柔らかい表情のまま…
『…あの、もう私やりますから
ゆっくりなさっててください』
無理矢理にでもやろうとする私に彼はまた声を出して笑う。
「本体と違って、疲れてないし
俺、こう見えても料理は得意なんだよ
…知ってるでしょ?」
「そう言えば結婚してからは、
花ちゃんは俺を
キッチンに立たせてくれないもんね〜」
「前は全部、自分でやってた」
「そうそう」
『……』
確かに…
カカシさんは幼い頃から最近まで1人で生活していた事もあり、料理は元より、掃除、洗濯 なんでもそつなくこなせてしまうのだった。
元々器用なこともあって下手をしたら私よりも上手なのでは…と思うこともしばしばで…
恋人になってから初めて、一人暮らしの彼のお部屋にお邪魔した時には、その腕前を披露してもらったこともあり驚いた程だ。
「じゃあ…手伝う?」
『あっ、ありがとうございます!』
「あはは!
君がありがとうって、変だよね」
「まあ言っても聞かないんだから
…強情な子だよね」
「たまにはゆっくりすれば良いんだよ
家事なんかサボってさ」
「ホントホント」
『……』
何だろう…何かほんの10分くらいの間に、凄く意気投合…してない?
ともあれ私は、暖かい気持ちで幻影であるカカシさんに笑顔を向けた。
すると彼は両手で私を後ろから抱き締め、耳元にキスを落とす。
そして私が驚いて落としそうになった食器を、お盆ごとすっと取り上げてしまった。
『カ…カカシさん!?』
「それは重そうだから、俺が運ぶよ」
「あ、こら!!
俺の奥さんに勝手に触らないでもらえる?」
影のカカシさんはテーブルに食器を並べながら素知らぬ顔で舌を出した。
「俺の奥さんでもあるんでね」
本体のカカシさんはムッとした子供っぽい表情を見せると、ソファから立ち上がって私の側まで歩み寄ってきた。
『え、えっと…
──…カ、カカシさん…?』