第16章 初めての嘘R18
──…ガチャリ
リビングに入ると、お湯が沸騰していて 暖かな湯気がキッチンから流れてくる。
「おかえり、お茶入れるよ、座って」
『…え?
あ!い、いえ!
カカシさんこそ座ってて下さい
私、変わります』
ホッとする。リビングに、カカシさんが居るだけで…
ふと見ると、ソファにもカカシさんがいる。
────?
────…?
(…えっ、と…
どっちが、どっちだろ?)
これは、最早全く見分けが付かない。
着ているものまで全て、一緒なのだから。
思わず眉を潜めて2人を交互に見る。と、私のその顔が面白かったのか、予期せず2人ともが声を出して笑い始めた。
『…なっ…もうっ…!
カカシさん!笑わないで下さい!』
先程までの重苦しい気持ちが、その明るい空気によって軽くなっていくような気がした。
────ずきり…
今さっき嘘を吐くと決めた事に胸が痛む。
「花ちゃん」
キッチンにいるカカシさんがソファを指差す。
「あっちが、本物、ほら、隣座って」
『あ、じゃあお手伝いします
2人とも、食べますよね?』
カカシさんにそんな事をさせるのは正直心苦しい。
幻影とは言え、カカシさんだ。
私は彼の隣に行くと湯呑みを3つそこに並べた。すると、
「あ、俺ご飯とかは食べないの
お茶も飲まない、実体ないから
でもありがとう、気持ちだけ貰うね」
と優しく微笑まれた。
『……そ、そうなんですか?』
「燃費が良くて羨ましいよね、
俺より強いし…
あ!ねぇ、考えたんだけどさ
花ちゃんのこの術、
ちゃんと確立したら…凄い忍軍、
作れると思わない?」
その言葉に、ぎょっとする。
何を言い出すのかと思えば…
『…確立するって…
無理ですよ、そんな…
例えまたやれって言われても…
同じ事は絶対に出来ません!
断言出来ます!
…そもそも
まぐれみたいなものなんですから…』
話している間も隣で幻影のカカシさんはテキパキと私の作った作り置きのおかずを温めてお皿に綺麗に盛っていった。
(…手際がいいなぁ…)
思わず見惚れてしまう。