第16章 初めての嘘R18
────…
暫く玄関先に座り込んでしまい動けなかった。
(…サスケ君にキス…された…)
自分の唇に指先で触れる。
──…まだ彼の血の味が、口の中に残っている。
心臓は先程からバクバクと、まるで自分の耳にでもあるかのように大きな音を立て強く鼓動を打ち続ける。
カカシさんに知られたら…心配を掛けるだけじゃなく、きっとまた怒らせてしまう
サスケ君もその対象になるかも知れない──…
悪いのは、隙を見せた自分
言われてショックだったが…確かにそうなのかも知れない。
(隙だらけ、か…)
サスケ君には告白されていて…この前もキスされそうになった──…というのに…
警戒しなかった…
したくなかった…
───するべき…だったのだろうか…
…2人きりに…なるべきじゃなかった?
だとしたら悲しい…悲し過ぎる…
カカシさんからも注意されたけど、さっきは何となく納得が出来なかった。
ちゃんと話したら伝わって、分かってくれると…──そう思っていた。
それを警戒心がない、とか…隙だらけ、とか言うのであれば…きっとそうなのだろう。
──…結果キスされたのだから
ゴシゴシと手の甲で唇を痛い程に擦る。
……だけど……
信用したいって言う前向きな気待ちは、
そこに同居してはいけなかったのだろうか?
(…いっそ…
キス…くらい…って…
…笑えたら、いいのに…)
サスケ君から向けられた想いは、真剣そのもので──…触れた唇には、彼の熱がこもっていた。
(…あんなキス…一生…忘れられないよ…)
唇をいくら擦った所で、その感触すら消えないのだから…
玄関の扉に視線を向ける。
(…戻らなきゃ…カカシさんが、変に思う…)
私は先程濡らしたハンカチで自分の口元をそっと拭った。
もしも唇にサスケ君の血が付いていたら…キスされた事が分かってしまうかもしれない。
知られたら…駄目──…絶対に…
そうして私は…初めて、カカシさんに
──…嘘を吐く事を、選択した。