第15章 奇妙な三角関係
『サスケ君…遠慮してる?
今日はお世話になったし、昼間は兵糧丸しか食べてないんじゃ…』
「いや、気持ちは有り難いが…俺は戻る」
『え?!
そ、そんな事言わないで…』
カカシさんは幻影の彼と扉の内側にまで入り、こちらに目を向けた。
「花ちゃん
あんまり無理強いしたら駄目だよ
…サスケ、久々の任務
遅くまで、ご苦労だったな」
「ああ」
もしかして、家に入るのは気不味い──…のかな…
(それも、そうか…)
『…あ…』
ふと見ると、サスケ君の頬に切り傷が出来ている。
それは恐らくさっきの戦闘で付いたものだ。
カカシさんには"サスケ君にあまり近づくな"と言われた。
でも…私の為に今日という日を1日割いてくれた彼をこのまま返すのは──…違う気がした。
かと言って…嫌がっているのに引き留めるのも、悪い。
(…絶対、声…聞かれてたもんね…)
気まずいのはお互い様だった──…
『カカシさん、先に入ってて下さい
私は、サスケ君の傷を治してから戻ります
…いいです…よね…?』
カカシさんは私を見ると諦めたような顔をする。
小さく「わかった」と言ってから扉を閉めた。
(…少し気を使わせてしまったかも知れない…)
「擦り傷だ、別に治療は必要ない」
『ダメ!
…小さな傷でも、ばい菌が入るよ
いいから、そこに座って。直ぐに済むから
ご飯も食べてくれないのに…このまま返す訳には行かないよ』
小さくそう言うと、渋々サスケ君は玄関先の段差に座ってくれた。
ホッとしてその隣に腰を下ろし、傷の程度を調べる。
(…割と深い…)
「変なところで責任感が強いな…お前は」
持っていたハンカチを取り出して、庭に設置してある蛇口で濡らす。
「…」
…と、サスケ君の視線を感じて顔を上げた。
『…?』
サスケ君は何故か、顔が赤かった。
彼の隣に戻って来て頬に手を添え傷口を拭う。
頬にこびり付いた微かな血液が、私の持っているハンカチに染みとなり赤く染まっていった。