第15章 奇妙な三角関係
(い、いやいや…
分の作った幻影相手に
ときめいてる場合じゃないのに)
「それで… 俺の幻影くん
君は──…何の為に連日現れるんだい?」
本体のカカシさんの投げ掛ける疑問に、影は笑顔を作って口を開く。
優しげな視線を、私から晒す事なく…
「花ちゃんの願いはただ一つ…だよね?
…可愛い、俺の奥さん」
パチッとウインクをされ…嫌な予感しかしない。
『…えっ…と…』
(…私に…振られても…)
ただなんとなく、また無性に恥ずかしい事を言われる気がして、私はその時 無性に幻影の口を塞いでやりたい衝動にかられた。
その予感は、きっと気のせいではない。
まるで丸裸でこの場に立っている様な、そんな気分だった。
先程から、変な汗が背中をつたいまくっている。
そのまま彼は視線を本体のカカシさんの方に向けた。
「いい?…花ちゃんはさ
" 毎日「あんた」に帰って来て欲しい "んだよ
…それだけ」
「え?」
『!』
…もう泣きそう…だ。
…ああ…そうだ…、私の願いなんて…ただ一つ。
────だから、か…
だから…"イメージ通り" であるカカシさんが、私の "願い" 通りに…毎日──…"帰って" きてくれた
これ以上ない程に顔が熱いのに更に頭に血が登ってきて、もうそこから蒸発していきそうな程だ。
秘めていた自分の願望が露呈された事に…みっともなくあわあわと焦り… その恥ずかしさに涙腺まで緩んできてしまう始末だった。
(この2日間、バタバタしていたけど…いろんな事を…心配も、したけど…
そうだ…──私は不思議と "寂しい" とは、思わなかった。
それは毎日"カカシさん"が私の元はへ帰って来てくれたから、なんだ…)
知らぬ内に私はこの幻影にその秘めた願望を満たされていた、という事──…
(何て傲慢で、身勝手な術なの…!)
「何処にでもいる"普通の夫婦"みたいに
毎日一緒にご飯を食べて
仲良く一緒にベッドに入る…
ささやかで可愛い"願い"だと思わない?」