第12章 邪念(サスケ視点)R18
「ま、あれだ…
冷静さを欠いて…火影としても、男としても──…
俺はお前の向けてくれている信頼に 傷を付けてしまったかも知れないな
その事は…本当にすまなかった」
言って、その手が下げられた。
「でも、
それだけあの子は俺にとって、大事な存在なんだ。
…ちょっかいを、出してくれるな」
一瞬真顔になったカカシは、直ぐに表情を戻すと そのまま軽い身のこなしで屋根から飛び降りる。
(…そういう事、か)
意外にも余裕がないのか
だがこいつがそうして牽制したくなる気持ちも理解出来る。
それでも尚、花を手に入れたいと思っているのだから、俺は…やはり救いようがないのだろう。
カカシへの恩を忘れるつもりもないが、気持ちは今の俺にも譲れないものがある。
話しておかなければ、フェアではない
…玉砕など、端から覚悟の上だ
「…今までの俺は…
色恋にうつつを抜かしていられるような状況でも
心境でもなかった…」
玄関を開けるタイミングのカカシに向かって声を掛けた。
見上げる形で奴は俺に向き合う。
「…今は抜かせるようになった、と?
結構な事だが…相手を選びなさいよ」
「…悪いが、それは出来ない」
「……何だって?」
リアクションは昨夜の影と同じだ。
2度同じ事を同じ顔に向けて言うことになるとは、変な気分だった。
「相手はあいつじゃなきゃ、意味がない
…"思い出した"んだ
あいつへの想いを…昨夜」
「…昨夜…ね
…それで…直ぐに告白、したの?
お前は随分…気が早いね
影の俺には…言われなかった?
────…手を出すなって」
カカシはドアノブから手を離して溜息を付いている。
腕を組み真っ直ぐに俺を見据えたその顔は
最早教え子に向けられるものではなかった。
だがそれでいい。
「ああ…
俺も、お前と同じだ。
──…冷静さを欠いていた…
お前と結婚したという事実を
…あの時、ナルトから知らされて…」
自分ではどうしようもない。
溢れてくる想いが、まるで留まる事を知らぬかのように 膨れ上がっていくのだから。
俺は今まで 自分に関わる大事なもの全てを拒絶して来た。
これはその…反動なのかも知れない。