第5章 ⑤相模屋紺炉 切甘
全く理由のわからないまま、森羅と別れ紺炉さんに詰所まで連れて来られた。いつも私の後ろしか付いてきてくれないから、こんなに近くで後ろから見るのは久しぶりかもしれない。そんな、どうでもいい事を考えてたら紺炉さんの髪紐に目がいった。その時はすでに、紺炉さんの部屋の前。
『こ、紺炉さん、それ…』
「ん?あぁ、に小さいころに作ってもらった髪紐だな。丈夫に作ってもらったんだな。まだまだほつれねェ」
「…どうして」
紺炉さんは、部屋に招き入れると座布団を出してくれた。ここに座って話をするらしく、紺炉さんの向かい側に少し離して置かれた。大人しく、そこに座り前を向くと…
「髪紐。どうしてだと思う?」
『…え』
いや、私が聞きたいのであって
「さっきの森羅の話の続きだが…」
『簪の?』
「そうだ。原国式で簪を贈るのは、"一生添い遂げたい"って意味だ」
それって…
「森羅は、お前が好きなんだよ」
『えっ、ちょっと待って下さい。でも、その簪…』
「あぁ、俺が森羅に返した」
『待って下さい!頭が付いていかない…』
森羅に簪を返して、紺炉さんが譲れないって言ってたのは…
「を森羅から奪った」
奪っ…た。つまり…