第8章 運命論者の悲み
遮ったのは太宰と猗憐
「え……?」
「マフィアの報復の手口は身分証と同じだ。細部が身分を証明する」
『マフィアの手口はまず裏切り者に敷石を噛ませて後頭部を蹴りつけ顎を破壊。激痛に悶える犠牲者をひっくり返して胸に三発』
「うえっ」
想像した敦は顔を顰める
「た 確かに正確にはそうですが……」
「この手口マフィアに似てるがマフィアじゃない。つまり──」
「犯人の……偽装工作!」
太宰の言葉を引き継ぐ箕浦
「そんな……偽装の為だけに 遺骸に二発も撃つなんて……非道い」
「ぶ〜〜」
行成声を出した乱歩にビクリとする杉本巡査
「はい時間ぎれー 駄目だねぇ君 名探偵の才能ないよ!」
あっはっは、と笑いながら杉本巡査の頭をだむだむする
「あのなぁ貴様!先刻から聞いていれば、やれ推理だやれ名探偵だなどと通俗創作の読み過ぎだ!事件の解明は即ち地道な調査、聞き込み、現場検証だろうが!」
箕浦はそう言い放つが、
「はぁ?まだ判ってないの?名探偵は調査なんかしないの。僕の能力【超推理】は一度経始すれば犯人が誰で何時どうやって殺したか瞬時に判るんだよ。のみならず、どこに証拠があってどう押せば犯人が自白するかも啓示の如く頭に浮かぶ」
「巫山戯るな 貴様は神か何かか!そんな力が有るなら俺たち刑事は皆免職じゃないか!」
「まさにその通り。漸く理解が追いついたじゃないか」
「──ッ!」
乱歩の言い様にキッとする箕浦
『まあまあ刑事さん落ち着いて』
「乱歩さんは始終こんな感じですから」
「僕の座右の銘は 〚僕がよければすべてよし〛 だからな!」
(座右の銘聞いてこんなに納得したの初めてだ……)
敦【座右の銘】生きているならいいじゃない
太宰【座右の銘】清く明るく元気な自殺
猗憐【座右の銘】楽しけりゃ何でも有り