第8章 運命論者の悲み
しかし吊り上げられたのは
「やあ敦君仕事中?おつかれさま」
「ま······また入水自殺ですか?」
掛かったのは敦の知る人物──
「これは単に川を流れてただけ」
「なるほど」
ドヤる太宰に頭に"?"をのせつつ納得する敦
─────
「······という訳なのです」
「何とかくの如き佳麗なるご婦人が若き命を散らすとは······!
何という悲劇!悲嘆で胸が破れそうだよ!
どうせなら私と心中してくれれば良かったのに!」
「······誰なんだあいつは」
「同僚である僕にも謎だね」
『莫迦なの?死にたくて死んだんじゃないでしょうに。』
敦から説明を受け嘆く太宰に掛かる言葉
「なっ·····!猗憐「猗憐さん!」······」
『すみません乱歩さん只今戻りましたぁ』
「おかえりー猗憐」
「次は誰だ……ッ!」
突如現れた猗憐の姿を目視し驚き絶句する箕浦
「しかし安心し給えご婦人。稀代の名探偵が必ずや君の無念を晴らすだろう!ねぇ乱歩さん?」
太宰はばっと乱歩の方に向くが
「ところが僕は未だ依頼を受けていないのだ。名探偵いないねぇ 困ったねぇ」
フゥと息をつき言った乱歩は誰かに目をつけた
「君名前は?」
「え?」
ビシッと指された警察官は敬礼し応えた
「じ 自分は杉本巡査です。殺された山際女史の後輩──であります」
ぽんっ
乱歩は杉本巡査の肩に手を置き云った
「よし杉本君 今から君が名探偵だ!60秒でこの事件を解決しなさい!」
「へぇッ!?」
乱歩の無茶ぶりにあわあわする杉本巡査
「へっ あ えー!?いくら何でも60秒は」
「はいあと50秒」
(普段の僕きっとこんな感じなんだろうな)
乱歩と杉本巡査のやり取りを見て敦は思った
「そ……そうだ山際先輩は政治家の汚職疑惑それにマフィアの活動を追っていました!」
(マフィア……!)
敦はその単語に反応する
「そういえば!マフィアの報復の手口に似た殺し方があった筈です!もしかすると先輩は捜査で対立したマフィアに殺され──」
「『違うよ』」