第8章 運命論者の悲み
── 河川敷 ──
「遅いぞ探偵社!」
怒気を含んだ声で怒鳴る仁王立ちの男
「ん きみ誰?安井さんは?」
そう問う乱歩の後ろで敦は
(本当に知らないとは···)
既に疲れていた
「俺は箕浦。安井の後任だ。本件はうちの課が仕切る。貴様ら探偵社は不要だ」
到着した3人に箕浦と名乗った男はキッパリとそう告げた
「莫迦だなあこの世の難事件は須く名探偵の仕切りに決まってるだろう?」
しかし乱歩は動じずに云う
箕浦フンと鼻で遇い
「抹香臭い探偵社など頼るものか」
そう云い返す
乱歩はすかさず聞く
「何で」
「殺されたのが───
俺の部下だからだ」
「今朝 川を流れている所を発見されました」
箕浦の後ろに控えていた警察官が遺体に被されたシートを捲りを云う
「··········ご婦人か」
乱歩は脱帽しそう云った
「胸部を銃で三発 それ以外は不明だ。殺害現場も、時刻も弾丸すら貫通しているため発見できていない」
箕浦は屈み込み詳細を説明する
「で 犯人は?」
「判らん」
遺体を覗き込み問う乱歩に応える箕浦
「職場での様子を見る限り特定の交際相手もいないようだ」
「それ」
箕浦の言葉に帽子を被り乱歩は云う
「何も判ってない
って云わない?」
乱歩の言葉に箕浦は眉間を寄せ腰を上げる
「だからこそ素人あがりの探偵になど任せられん。さっさと──」
「おーい!網に何か掛かったぞォ!」
箕浦の言葉を遮る大声で他の警察官が叫ぶ
「何です あれ?」
問う敦に先程説明をしていた警察官が応える
「証拠が流れていないか 川に網を張って調べているのですが──」
「ひっ人だァ!」
またしても話を遮る声
「人が掛かってるぞォ!」
その言葉に騒然とする現場
「何だと!」
「まさか······第二の被害者!?」