第6章 ヨコハマ ギヤングスタア パラダヰス
「そういえば皆さんは探偵社に入る前は何を?」
敦の言葉に訪れる静寂
「?」
始めに静寂を破ったのは
「何してたと思う?」
「へ?」
「なにね 定番なのだよ。新入りは先輩の前職を中てるのさ」
「はぁ······じゃあ······」
敦は湯呑みを置き考え
「谷崎さんと妹さんは······学生?」
「おっ 中ッた 凄い」
「どうしてお分かりに?」
「ナオミさんは制服から見たまんま。谷崎さんのほうも──歳が近そうだし勘で」
『おぉー』
「やるねえ。じゃあ国木田君は?」
「止せ 俺の前職など如何でも──」
「うーん お役人さん?」
「『惜しい』」
「彼は元学校教諭だよ。」
『数学の先生!』
「へえぇ!」
「昔の話だ。思い出したくもない」
「じゃ私と猗憐は?」
「猗憐さんは学生?」
『ぶー!って云うか私治と同じ歳だよ!22!』
「ええ!ああ、でも云われてみると綺麗なような······?いや、でも、うーん
なら、モデルとか?」
『ふふっモデルさんねぇ 違うけど!お世辞でも嬉しい!』
「い いえ!むしろ勿体無いですよ!」
「うんうん、本当に勿体無いよ。なんて云ったって絶世の美女だからねえ猗憐は」
『うふふ それに敦くん、私と治の前職は同じだよ?』
(太宰さんと同じ······?)
「『うふふ』」
(想像もつかん······!)
猗憐だけなら出てくるが太宰が加わると出てこない前職
「無駄だ 小僧。武装探偵社の七不思議の一つなのだ、こいつらの前職は」
「最初中てた人に賞金が有るンでしたっけ」
「そう なんだよね。誰も中てられなくて懸賞金が膨れあがってる」
「俺は溢者の類だと思うが 太宰は違うと云う。だが猗憐と同じとなると確かに違うのかもしれないが、しかし太宰が真面な勤め人だった筈がない」
「ちなみに懸賞金って如何ほど」
敦が食い付いたのは谷崎の言葉
「参加するかい?賞典は今──
──七十万だ」
ガタッ
それを聞き勢い良く立ち上がった敦の目はギラついている
「中てたら貰える?本当に?」
「自殺主義者に二言は無いよ」
敦の目が鋭くなった